「身体に出た、言えなかった気持ち」 ── 風邪をひきやすかった私が、カウンセリングで知ったこと

子どものころから、風邪を引きやすい子だった。 

一年の半分は風邪を引いていて、いつまでも残る咳に辟易としていたような記憶がある。 

下痢と便秘を繰り返し、胃液が逆流し、胸が痛むこともあった。 

小学生のころからの肩こり、首のこわばり、不整脈も、私には“日常”だった。

父は柔道整復師で、東洋医学に基づいた整体の施術院を開いていた。 朝から晩まで予約が入り、ほとんど休みもない繁盛ぶり。 お客さまはつらそうな顔で来て、笑顔で帰っていく——そんな光景を見て育った。

親戚には医師もいたが、治療の難しい症状については父に相談する姿もよく見かけた。

その父から私は「身体が弱い」と言われ続けていた。 

父なりのケアもしてくれていたけれど、私はいつのまにか、

「自分は体が弱いのだ」と、何の疑いもなく信じていた。

心理学を学んだあと、大学院には進まず、私は迷っていた。

人の役に立つ仕事……カウンセラーでなければ、薬剤師か、ソーシャルワーカーか。

そんなとき、職場近くの銀座の漢方薬局に飛び込みで訪ねた。

その日の唐突な思い付きだった。

「この仕事はどうやってなるんですか?どんな仕事ですか?」 30歳の私は、小学生のように尋ねた。

「経営したいのか?調剤したいのか?カウンセリングしたいのか?」と聞かれ、戸惑った。 

でも私が口にしたのはこうだった。 

「仕事はできるけど、昔から風邪ばっかり引いていて困っているんです。ひどい時は点滴を打って出勤したこともあります」

その方は言った。 「それなら、まず自分を実験にしてみなさい」

そこから3年間、私はその漢方の先生のもとで学びながら企業での仕事を続け、1年ほど経ったころからソーシャルワークの勉強も始めた。

私は少しずつ、風邪を引かなくなった。体調の波も読めるようになり、「これは効いている」と実感していた。

では、なぜ薬剤師にならなかったのか? その問いには少し戸惑いがある。 

一つは、その先生とのあいだに難しい出来事が起こったこと。 

だから、漢方薬とは手を取り合えたけれど、学び続ける道や薬剤師になる選択肢は、自然と外れていった。 いや、どこかで無意識に「そうしない」選択をしていたのかもしれない。 (無意識というのは、ときに便利で、あとから何とでも言えるようなところがあるのだが……)

そうして、私の中での身体の困りごとの“半分”は、漢方薬との出会いで解消された。 

それでも、「元々の体質だから仕方ない」と思っていた。

ところが、カウンセリングを受け始めて—— 最初に驚いたのは、「気づき」ではなく、「身体の変化」だった。

あんなに常にあった頭痛、肩こり・首のこわばりが、いつの間にか消えていた。 寝ている間の歯ぎしりもなくなり、 セラミックの歯が割れて何度も歯医者に通っていたこともなくなった。

「これはどういうこと?」 「私の身体のつらさは、ほとんど心からきていたの?」

漢方が効いたと思っていたけれど、 あれは薬効だけじゃなくて、「話を聴いてくれる」人の存在があったからこそ、効いたのかもしれない——

そう気づいたとき、私は初めて、 「身体が弱かった」のではなく、 「言えなかった気持ちを抱えていた」のかもしれない、と思えた。

40代にして、今までで一番体調がいいのだった。

心理学では、アジア圏の人々は身体化しやすい傾向があるとも言われている。 もちろん、すべてが心の問題だと言いたいわけではない。 適切な医療は前提としてとても大切だと思っている。

でも、もし今、あなたが原因のわからない体調不良や疲れを抱えているとしたら、 それは「もっと自分を聴いて」と、 身体がやさしく教えてくれているサインなのかもしれません。

身体は、いつもいちばん正直だから。

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